カリフォルニアでモナーク蝶大量死、農薬曝露が原因と判明
2024年1月、カリフォルニア州のPacific Grove Monarch Sanctuaryで、数百匹のモナーク蝶が死亡または瀕死状態で発見されるという衝撃的な事件が発生しました。蝶たちは痙攣を起こしたり、山のように積み重なって死んでいる状態で発見され、これは神経毒性農薬中毒の典型的な症状だったのです。この事件を調査した最新の査読済み研究により、農薬曝露が大量死の原因であることが科学的に証明されました。
今回紹介するのは、The Guardian紙が2025年8月1日に報道した「Monarch butterflies’ mass die off in 2024 caused by pesticide exposure – study」という記事です。この研究は、野生のモナーク蝶における農薬の影響を直接証明した貴重な事例として、科学界で大きな注目を集めています。
この記事のポイント
- 2024年1月、カリフォルニア州Pacific Grove Monarch Sanctuaryで大量死事件が発生
- 検査した10匹の蝶から平均7種類の農薬を検出
- ピレスロイド系農薬が高濃度で検出され、致死レベルと判定
- 野生での農薬影響を直接証明した希少な研究事例
- モナーク蝶の個体数は数十年間で一部地域において最大90%減少
Xerces Societyの画期的な研究
この研究を主導したのは、無脊椎動物保護団体Xerces SocietyのStaci Cibotti氏です。彼女は昆虫学者であり農薬プログラムの専門家として、今回の事件を詳細に調査しました。検査対象となった10匹の蝶からは、それぞれ平均7種類もの農薬が検出され、研究者たちはこれらが致死レベルに達していたと判断しています。
「この事件は、現実世界でのモナーク蝶への農薬曝露とその影響を直接記録する貴重な機会を与えてくれました」とCibotti氏は述べています。「実験室での研究や個体数モデルでは農薬がモナーク蝶に有害であることが示されていましたが、野生個体群への農薬の影響を現場で捉えることは困難でした。この研究はそのギャップを埋めるのに役立ちます」
実際、野生で農薬によって蝶が死ぬことを証明するのは非常に困難です。死後すぐに発見して検査する必要があるからです。今回の研究は、サンプル数は限られているものの、大量死と個体数減少全体について「意味のある洞察」を提供していると研究者たちは記しています。
ピレスロイド系農薬の深刻な影響
検査されたすべての蝶から、同じ3種類のピレスロイド系農薬が高濃度で検出されました。ピレスロイド系農薬は、カリフォルニア州の農業地域や住宅地で広く使用されている殺虫剤です。住宅での使用は報告義務がないため、すべてのサンプルから同じ種類のピレスロイドが検出されたことから、研究者たちは近隣の住宅地での使用が原因と推測しています。
検出されたピレスロイドの一部は、それだけで致死レベルに達していました。さらに、複数の農薬が組み合わさることで相乗効果が生まれ、毒性がさらに高まった可能性があります。農薬の残留物は、作物、芝生、観賞用の花などに付着し、モナーク蝶の幼虫や花の蜜を吸う成虫にとって中毒のリスクとなります。
また、多数の蝶が集団で水を飲む浅い水源への農薬の流出も、Pacific Groveのような大量死のリスクを高める要因となっています。私もこの詳細を読んで、普段何気なく使われている農薬が、こんなにも深刻な影響を与えているとは思いませんでした。
モナーク蝶の長期的な個体数減少
今回の大量死事件は、モナーク蝶が直面している長期的な危機の一部です。アメリカの一部地域では、数十年間でモナーク蝶の個体数が最大90%も減少しています。この減少の要因として、農薬、気候変動、生息地の喪失が挙げられています。
Pacific Grove Monarch Sanctuaryは、カリフォルニア州沿岸にある約400の越冬地の一つで、モナーク蝶の驚異的な渡りと繁殖サイクルにとって重要な拠点です。モナーク蝶は毎年、カナダや北部アメリカから最大4,000キロメートルもの距離を飛んで、カリフォルニアやメキシコの温暖な地域で冬を過ごします。この渡りは複数世代にわたって行われ、春に北上する際は途中で産卵・死亡を繰り返しながら、秋には同じ越冬地に戻ってくるという、まさに自然界の奇跡とも言える現象です。Xerces Societyの調査によると、2023年11月にはPacific Groveで約6,600匹の蝶が越冬していました。この数字を基準に考えると、今回の大量死の規模の深刻さがより理解できます。
モナーク蝶は北アメリカ大陸を渡る希少な蝶として知られ、その美しいオレンジと黒の羽は多くの人に愛されています。特に注目すべきは、彼らの渡りが単なる移動ではなく、幼虫時代に食べるミルクウィード(トウワタ)という特定の植物に完全に依存していることです。成虫は花の蜜を吸いますが、卵は必ずミルクウィードに産み、幼虫はこの植物しか食べることができません。そのため、農薬がミルクウィードに付着すると、幼虫は直接的な影響を受けてしまうのです。個体数の激減は、単に美しい蝶が減るという問題を超えて、生態系全体の健康状態を示す重要な指標となっているのです。
解決策は農薬の削減
Cibotti氏は、解決策は明確だと述べています:「農薬を減らすことです」。彼女は特に、モナーク蝶の渡りサイクルの敏感な時期における農薬曝露の削減が重要だと強調しています。
「これらの集団死亡事件は、渡りサイクルの特に敏感な段階で発生します。そのため、この時期の農薬曝露を減らすことは、即座の損失を防ぐだけでなく、翌春の個体数回復の可能性を改善し、長期的な回復を支援するためにも不可欠です」とCibotti氏は説明しています。
この研究は、実験室での研究結果を現実世界で裏付ける貴重な証拠を提供しました。農薬がモナーク蝶に与える影響について、これまで理論的に予測されていたことが、実際の野生個体で確認されたのです。
日本への示唆と私たちができること
この研究結果は、日本の環境保護にも重要な示唆を与えています。日本でも農薬の使用は広く行われており、蝶や他の昆虫への影響が懸念されています。モナーク蝶のような渡りをする昆虫は、生態系の健康状態を示すバロメーターとしての役割を果たしています。
私もこの記事を読んで、普段何気なく使われている農薬が、こんなにも深刻な影響を与えていることに驚きました。住宅地での農薬使用が報告されていないという事実も、問題の見えにくさを示しています。
皆さんはこの研究結果をどう受け止めますか?私たちの身近な環境で使われている農薬について、もっと注意深く考える必要があるのではないでしょうか。美しいモナーク蝶のような生き物を守るために、私たちにできることは何でしょうか。ぜひ一緒に考えてみたいですね。
【参考記事】「Monarch butterflies’ mass die off in 2024 caused by pesticide exposure – study」(The Guardian、2025年8月1日)



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