はじめに
みなさんは、権力を持つ人たちがどれくらい公平に行動するかが、私たち一般の人々の反応のしやすさによって変わると聞いたらどう思いますか?「そんなことが本当にあるの?」と驚かれるかもしれませんが、最近発表された研究によると、不公平な扱いに対してみんなが連帯して立ち向かいやすいかどうかが、権力者の行動に大きな影響を与えることがわかったのです。今回は、そんな興味深い研究の内容を分かりやすくまとめてみました。
今回紹介するのは、『The willingness of those in power to act fairly depends on how easily others can collectively push back against unfair treatment』という記事(英語)です。この記事の内容と調査結果を、日本の読者の皆さんにも親しみやすい形で解説しますね。
研究内容の概要とポイント
- 権力者の公平な対応は、周囲の人々が集団として不公平に対して対抗可能かどうかに強く影響される
- 英国スタッフォードシャー大学とフィンランド・ユヴァスキュラ大学の共同研究
- 「Ultimatum Game」という心理学実験の多人数版を使用して検証
- 集団での抵抗が容易な条件では、権力者はより平等に資源を分配する傾向
- 逆に集団的反抗が困難な条件では、不平等が拡大しやすい
- この発見は、社会や職場、公的機関における不正対策や透明性向上に役立つ示唆を与える
どんな方法で調べた?
この研究では、「Ultimatum Game」という有名な心理学実験を改良して使用しました。通常この実験は2人で行いますが、今回は1人の「提案者(Proposer)」と3人の「応答者(Responder)」で実施したのです。
実験の流れはこうです:提案者は100ポイント(実際のお金に換算される)を与えられ、3人の応答者にどう分配するかを決めます。応答者たちがその提案を拒否したい場合は、3人全員が自分のポイントを出し合って「拒否プール」を作る必要があります。このプールが一定の水準に達すると、提案が拒否され、誰もポイントを得られません。
研究者たちは、この「拒否の難易度」を3段階に設定しました。「Easy(簡単)」条件では少ないポイントで拒否できますが、「Hard(困難)」条件では3人全員がほぼ全ポイントを出さないと拒否できません。ちょっとやってみたいですね!
一番驚いたのは集団の力の大きさ
実験結果で最も印象的だったのは、集団で連帯することの「力」です。Easy条件(拒否しやすい状況)では、提案者はより平等に資源を分配し、結果として両方の役割の収入がより平等になりました。一方、Hard条件(拒否が困難)では、提案者はより少なく分配し、役割間の収入格差が大きくなったのです。
さらに興味深いのは、実験後のインタビューです。Easy条件の提案者たちは「公平であることが自分の義務だと信じている」と答えました。でも研究者のDr Gordonは「これは興味深い。なぜなら、不公平な決定は簡単に拒否されるため、実際には選択肢がなかったからだ」とコメントしています。つまり、「公平でいたい」という気持ちも、実は外的な圧力によって形成されている可能性があるんですね。
この研究が私たちの社会に教えてくれること
日本の社会や職場環境でも「権力者の不公平な扱い」が問題になることは少なくありません。今回の研究結果を踏まえると、市民や従業員が連帯して問題に声を上げたり、行動したりしやすい仕組みづくりが、公平な社会形成に不可欠であることが見えてきます。
例えば、会社の内部告発制度を充実させたり、自治体での市民参加の場を増やすことも、こうした集団的抵抗の敷居を下げる取り組みといえそうですね。Dr Gordonも「抗議活動やストライキ、有権者の権利を制限する法律への警戒が必要」と指摘しています。
また、「私たち一人ひとりの声は小さいから」という諦めをやめて、みんなでまとまることの大切さを改めて感じました。みなさんはどう思いますか?
研究の限界も理解しておこう
Dr Gordonは研究の限界についても正直に語っています。「実験では、ポイントやお金を使って現実の抗議活動やキャンペーンのコストを表現しましたが、実験は現実世界の複雑さを完璧に表現するものではありません」とのこと。
また、参加者がポイントを自分で稼いだ場合や、共通の目標やアイデンティティを持つ場合は、結果が異なる可能性もあるそうです。それでも、この研究は権力と公平性の関係について重要な洞察を提供してくれていると思います。
まとめ
- 権力者の公平な行動は、集団で不公平に立ち向かいやすいかどうかに強く左右される
- 集団的な抵抗がしやすい状況では、権力はより正当に行使されやすい
- 「公平でありたい」という気持ちも、外的な圧力によって形成される可能性がある
- 日本の社会でも、連帯や声を上げやすくする仕組み作りが公平化の鍵になる
- ただし、実験には限界があり、現実世界はより複雑であることも理解が必要
この新しい視点は、私たち一人ひとりが社会に影響を与えうることを再認識させてくれました。今後もこうした社会心理学の研究を注目していきたいと思います。
参考記事: The willingness of those in power to act fairly depends on how easily others can collectively push back against unfair treatment
学術論文: Social Psychological Bulletin (DOI: 10.32872/spb.11607)



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