赤ちゃんの脳は記憶を作っているのに、なぜ最初の記憶は残らないのか?

赤ちゃんの記憶形成と幼児期健忘の謎|1歳から記憶を作るのになぜ覚えていない?最新脳科学研究2025 科学研究
最新のfMRI研究で判明!赤ちゃんの脳は1歳頃から記憶を形成しているのに、なぜ幼児期の記憶は残らないのか?海馬の働きと幼児期健忘のメカニズムを科学的に解説。起きている赤ちゃんの脳活動を可視化した画期的研究の詳細をお届けします。

赤ちゃんの脳は記憶を作っているのに、なぜ最初の記憶は残らないのか?

みなさん、赤ちゃんの頃の記憶って覚えていますか?実はほとんどの人が覚えていないはずですよね。でも、赤ちゃんの脳は1歳頃からちゃんと記憶を作っていることが、最新の脳スキャン技術によって明らかになりました。今回紹介する『You Don’t Remember Being a Baby, but Your Brain Was Making Memories』(https://www.scientificamerican.com/article/you-dont-remember-being-a-baby-but-your-brain-was-making-memories/)という記事では、赤ちゃんがどうやって記憶を形成しているのか、新たな疑問とともに紹介されています。

  • 赤ちゃんの脳は1歳頃から記憶を形成していることがMRIの脳スキャンで分かった
  • 脳の海馬が重要な働きをしているが、未発達のために記憶が定着しにくい
  • 「幼児期健忘」と呼ばれる初期の記憶が消えてしまう現象への新しい理解につながる
  • この研究は、脳の発達過程と記憶メカニズムの解明に大きく貢献する

推定読了時間:約4分

この記事のポイント

  • 赤ちゃんの脳は1歳頃から記憶を形成し始める(12ヶ月以降で効果が最も明確)
  • ただし、脳の発達段階が未熟なため、最初の記憶は大人になってほとんど忘れてしまう
  • 脳スキャン技術(機能的MRI)で起きている赤ちゃんの記憶活動を可視化した画期的な研究
  • 海馬の発達が記憶の保持に大きく関係していることを確認
  • 幼児期健忘の科学的メカニズム解明に新たな光をあてる研究成果

目次

幼児期健忘とは何か?二つの可能性

大人に「最初の記憶」について尋ねると、たいてい幼稚園時代より前のことは思い出せないものです。これは時間が経ったから忘れてしまったというわけではなく、「幼児期健忘」と呼ばれる現象です。

この現象について、科学者たちは二つの可能性を考えています。一つ目は「赤ちゃんは記憶を保存できない」という考え方です。脳の一部で記憶に重要な役割を担う海馬(かいば)と呼ばれる部分が幼い時期にはまだ十分に発達していないため、記憶自体が作られないという説です。

二つ目は「記憶は作られているが、後からアクセスできなくなる」という考え方です。マウスを使った最近の研究では、海馬は生後早期から記憶を保存でき、それらの記憶は成体になっても保持される可能性があることが分かっています。実際に、初期の体験中に活動していた海馬のニューロンを刺激することで、忘れられた記憶を取り戻すことができたのです。

では、人間の赤ちゃんはどうなのでしょうか?

脳スキャンによる最新研究の成果

今回の研究では、コロンビア大学のトリスタン・イェーツ博士らの研究チームが、起きている状態の赤ちゃんに機能的MRI(fMRI)を使って脳活動を測定するという画期的な実験を行いました。これまで赤ちゃんの脳スキャンは眠っている間に行われることが多かったのですが、記憶は起きているときの体験に基づくため、この研究では起きている赤ちゃんでの測定にこだわりました。

実験はとても大変だったそうです。赤ちゃんはよく動きますし、指示に従えませんし、集中力も短いため、良いデータを取るのは非常に困難でした。研究チームは400回以上のセッションを重ね、家族からの協力を得ながら、起きている赤ちゃんを静かに、機嫌よく、集中させる革新的な技術を開発したのです。

実験では、顔、物体、風景の写真を一枚ずつ赤ちゃんに見せながらfMRIで脳活動を測定しました。その後、以前見せた写真と新しい写真を並べて見せ、赤ちゃんがどちらをより長く見るかで記憶を測定しました。赤ちゃんが前に見た写真をより長く見た場合、その画像を「記憶している」と判断したのです。

その結果、1歳頃から海馬が記憶を保存できることが分かりました。海馬は、後で記憶していると判断された画像を最初に見たときにより活発に活動していたのです。この効果は12ヶ月以降で最も明確で、全体的に記憶力の強い赤ちゃんや、特定の出来事の記憶(エピソード記憶)に重要な海馬の領域で特に顕著でした。

これには本当に驚きました。起きている赤ちゃんの脳が記憶を作っている瞬間を科学的に捉えることができたなんて!この研究のおかげで、赤ちゃんの心の動きが少し身近に感じられますね。

なぜ最初の記憶は残らないのか?

それでも、なぜ私たちは赤ちゃん時代の記憶をほとんど覚えていないのでしょうか?今回の研究結果は、赤ちゃん時代に記憶は作られているが、後からアクセスできなくなるという二つ目の仮説を支持しています。

ただし、この研究でもまだ解決されていない重要な疑問があります。たとえば、これらの海馬の記憶はどのくらい長持ちするのでしょうか?研究では数分間しかテストしていませんが、幼児期健忘は何年にもわたって起こる現象です。また、この時期の記憶能力はどの程度洗練されているのでしょうか?研究では個別の写真をテストしましたが、実際のエピソード記憶は複数の人、場所、物事が時空間にわたって相互作用する複雑な出来事です。

最も深く、興味深い疑問は、1歳で記憶が脳に保存されているのに、なぜほとんどの人の最初の記憶は4〜5歳(またはそれ以降)なのかということです。それより早い記憶にアクセスできなくするものは何なのでしょうか?それらにアクセスするコツや方法はあるのでしょうか?もしあったとしても、私たちはそれを理解できるのでしょうか?

この研究は「幼児期健忘」のメカニズムを科学的に解明する重要な一歩であり、将来的には言語習得や発達障害の理解、育児や早期教育にも影響を与える可能性を秘めています。

まとめと今後の課題

今回の研究によって、赤ちゃんの脳が1歳頃から記憶を作り始めることが科学的に証明されました。しかも、その記憶は作られているのに私たちがアクセスできなくなるという、とても興味深い現象があることも分かりました。これは本当に驚きの発見ですね。

ただし、まだ解明されていない謎もたくさんあります。この記憶がどのくらい持続するのか、なぜアクセスできなくなるのか、そのメカニズムの詳細はまだ分かっていません。また、実験では個別の写真での記憶をテストしましたが、実際の複雑な体験の記憶がどう形成されるかについても、さらなる研究が必要です。

皆さんは自分の赤ちゃん時代のこと、何か記憶がありますか?私はこれを読んで、幼児期健忘がただの忘却現象ではなく、脳の成長過程として自然なものだとやっと理解できました。赤ちゃんの頃から脳は休むことなく情報を処理し続けているんだなあ、と感動すら覚えました。

もしかすると、私たちの脳のどこかには、赤ちゃん時代の記憶がまだ眠っているのかもしれませんね。今後さらに詳しい研究が進んで、記憶にまつわるさまざまな謎が解き明かされることを期待したいです。

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