二重スリット実験の新たな展開!MITが原子レベルで実現した「理想的実験」とは
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- MITの物理学者が量子力学の基本実験「二重スリット実験」の最も「理想化された」バージョンを実現
- 10,000個以上の原子を極低温で配列し、個々の原子をスリットとして使用する革新的手法
- 実験結果は量子理論の予測を完全に確認し、光の波動・粒子二重性を実証
- アインシュタインとボーアの1927年の有名な議論に決着をつける重要な成果
- 研究はPhysical Review Letters誌に掲載され、量子科学技術国際年にふさわしい発見
二重スリット実験とは何か?
まず、この実験自体を知らない人もいるかもしれませんね。二重スリット実験は、1801年にイギリスの学者トーマス・ヤングによって最初に行われた実験で、光が波の性質を持っていることを示しました。幅の狭い二つの隙間(スリット)に光を通すと、普通ならまっすぐに通過すると考えますよね。でも、スクリーンに現れるのは波のパターンのような「干渉縞(かんしょうしま)」という模様なんです。
さらに驚くべきことに、現代の量子力学では、光は同時に粒子(フォトン)でもあり波でもあるという「二重性」を持っていることがわかっています。でも、この二つの性質を同時に観察することは絶対にできません。粒子として見ようとすると波の性質が隠れ、波として見ようとすると粒子の性質が隠れてしまうのです。これ、聞いたことがある人も多いでしょう?
MITの革新的な実験手法
今回紹介するのは、『Famous double-slit experiment holds up when stripped to its quantum essentials』(MITニュース)という記事(2025年7月28日発表)です。この研究では、ノーベル物理学賞受賞者のWolfgang Ketterle教授率いるMITチームが、二重スリット実験の最も「理想化された」バージョンを実現したんです。
従来の実験との最大の違いは何か?なんと10,000個以上の原子を極低温(絶対零度に近い温度)まで冷却し、レーザー光で結晶のような格子状に配列したことです。そして個々の原子を「スリット」として使用したのです。
さらに革新的なのは、原子の「ファジネス」(空間的な広がり)を調整できることです。原子を固定するレーザーの強さを変えることで、原子をよりぼんやりさせたり、はっきりさせたりできます。ぼんやりした原子ほど、通過するフォトンの経路情報を記録しやすくなり、その結果フォトンは粒子として振る舞いやすくなるのです。つまり、研究者たちは光が波として振る舞うか粒子として振る舞うかの確率を自在に調整できるようになったということです!
アインシュタインとボーアの歴史的議論
この実験が特に注目される理由は、約100年前の1927年に行われたアルバート・アインシュタインとニールス・ボーアの有名な議論に決着をつけるからです。
アインシュタインは「フォトン粒子が二つのスリットのうち一つを通過する際、そのスリットにわずかな力を与えるはず。まるで鳥が葉っぱを揺らして飛び去るように」と主張しました。彼は、この力を検出しながら同時に干渉パターンも観察できれば、光の粒子性と波動性を同時に捉えられると考えていたのです。
一方、ボーアは量子力学の不確定性原理を用いて、「フォトンの経路を検出しようとすると、その干渉パターンが消えてしまう」と反論しました。「神はサイコロを振らない」という有名な言葉で知られるアインシュタインの決定論的な宇宙観に対し、ボーアは量子世界の根本的な不確定性を主張したのです。
今回のMITの実験では、まさにこの点が検証されました。研究チームは原子を固定するレーザー(アインシュタインの「バネ」に相当)を完全に切って、原子が自由に浮いている状態でも実験を行いました。結果は?ボーアが正しかったのです。原子が「揺すられる」たびに、波の干渉は弱くなったのです。
この発見が示す量子世界の真実
今回の結果は、量子力学の理論予測を完全に確認するものでした。研究チームは「フォトンの経路についてより多くの情報を得ようとするほど、干渉パターンの可視性が低くなる」ことを実証したのです。これは量子理論の核心的な予測そのものです。
Ketterle教授は「アインシュタインとボーアは、単一原子と単一フォトンでこのような実験が可能になるとは想像もしていなかっただろう。我々が行ったのは理想化されたGedanken実験(思考実験)の実現だ」とコメントしています。
さらに重要な発見は、従来重要だと考えられていた「バネ」(原子を固定する仕組み)が実は関係ないということでした。重要なのは原子の「ファジネス」だけで、これは量子相関という、より深い量子力学の記述を必要とすることを示しています。
この研究は、2025年が国連によって「量子科学技術国際年」に指定され、量子力学の形成から100年を祝う年であることを考えると、とても象徴的ですね。共著者のYoo Kyung Lee氏は「量子物理学を祝うこの年に、この歴史的論争の解明に貢献できたのは素晴らしい偶然です」と述べています。
私もコーヒー片手にこの記事を読んでいて、「この精密な実験が100年前の偉大な物理学者たちの議論に決着をつけるなんて」と感慨深くなりました。量子世界は確かに私たちの直感に反する不思議な場所なんですね。
皆さんはどう思いますか?量子の世界の「不確定性」は受け入れ難いものでしょうか、それとも自然の美しい神秘だと感じますか?興味があれば、ぜひ元記事もチェックしてみてくださいね。
元記事:Famous double-slit experiment holds up when stripped to its quantum essentials (MITニュース)



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