アメリカのトランスジェンダー未成年、医療の現実とは?

アメリカのトランスジェンダー未成年、医療の現実とは? 科学研究
ハーバード大学の最新研究で判明したアメリカのトランスジェンダー未成年への医療実態。思春期抑制剤やホルモン療法の処方率は0.1%未満という驚きの結果を詳しく解説。

アメリカのトランスジェンダー未成年、医療の現実とは?

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この記事のポイント

  • アメリカのトランスジェンダーおよび多様な性自認を持つ未成年(TGD)のうち、思春期抑制剤やホルモン療法の処方率は0.1%未満という非常に低い数字
  • 民間保険未加入者や公的保険(メディケイド)加入者の場合は、この数字よりさらに低いと推察される
  • 多くの人が抱く印象とは異なり、TGD未成年への医療介入はごく一部
  • 元記事で具体的な研究データを詳細解説
目次

概要と重要なポイント

ハーバード大学公衆衛生大学院などによる最新の研究で明らかになったのは、「アメリカのトランスジェンダー(自分の生まれた性別とは違う性として生きたいと感じる人)や性の多様性を持つ未成年(TGD)に対して、思春期を一時的に止める薬(思春期抑制剤)や、性の自認に合わせたホルモン療法が処方されている割合が0.1%未満という事実」です。この数字は、多くの人が持つ印象とは大きく異なる結果でした。

具体的なデータとアメリカの現状

ハーバード大学公衆衛生大学院、ハーバード・ピルグリム・ヘルスケア研究所、FOLX Healthによる共同研究では、プライベート保険(日本でいう民間の医療保険)に加入しているTGD未成年のうち、実際に診断・治療目的で思春期抑制剤や性自認に沿ったホルモン療法を受けている割合は、全体の0.1%未満、具体的には1000人中1人未満だったことが判明しました。研究では2018年から2022年の5年間にわたって、8歳から17歳の510万人以上の医療保険請求データを分析。その結果、思春期抑制剤を処方されたのは926人、ホルモン療法を受けたのは1,927人でした。さらに、公的保険(アメリカのメディケイド)や保険未加入者の場合は、この0.1%をさらに下回ると予想されています。
この数字を日本人がイメージしやすいように例えると、東京ドーム(約5万5千人収容)を満員にした中でも、ほんの数十人しか治療を受けていないということになります。

研究の背景と社会的意義

この研究を主導したランドン・ヒューズ研究員は、「トランスジェンダーの若者に対する性別適合医療の政治問題化は、『数百万人の子どもがホルモンを使用している』『この種の医療が安易に提供されすぎている』という誤った言説によって推進されてきました。我々の調査結果は、それが事実ではないことを明らかにしています」と述べています。研究では12歳未満の患者にはホルモン療法が処方されていないことや、治療のタイミングが世界プロフェッショナル・トランスジェンダーヘルス協会や米国小児科学会などの基準に沿っていることも確認されました。
共著者のジェイ・コーマン氏(FOLX Health分析研究責任者)は、「高校生の3%以上がトランスジェンダーであると自認していることを考慮すると、実際に医療にアクセスしているTGDの若者は驚くほど少ない」と指摘しています。これは、医療へのアクセスに様々な障壁が存在することを示唆しています。

日本との比較と感じたこと

日本では、「性同一性障害」として医療機関を受診する人が徐々に増えている印象ですが、実際には治療まで行くケースはごくごく一部。保険適用も限定的で、高額な治療費や待機期間の長さなど、やはり大きな課題があります。今回のアメリカの研究結果を知ると、政治的議論で語られるイメージと実際の医療現場での数字には、日米ともに大きなギャップがあることが分かります。この調査データは、性の多様性に対する社会の理解・受け入れが「数の多さ」では測れない重要な課題であることを改めて示しています。データに基づく冷静な議論の重要性を感じました。

参考:元記事情報とリンク

今回ご紹介した調査は、ハーバード大学公衆衛生大学院の公式サイト記事『Gender-affirming medications rarely prescribed to U.S. adolescents』と、2025年1月6日にJAMA Pediatricsに掲載された研究論文に基づいています。

一般的なイメージと大きく異なる現実の数字を元に、今後は日本社会の議論にも正確なデータに基づく冷静な検討が必要だと感じました。

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